SNS動画に流行の音楽を付けたいものの、アプリ内で選べる曲なら自由に使えるのか、市販音源を数秒だけ流すのは問題ないのか、収益化や商品紹介を始めた途端に扱いが変わるのかなど、投稿前に判断しにくい点は少なくありません。
音楽には、作詞家や作曲家などが持つ歌詞とメロディーの著作権だけでなく、歌手の実演やレコード会社が制作した音源に関する著作隣接権もあるため、JASRACやNexToneとSNS運営会社の契約だけを確認しても、市販音源を使えるとは限らない点が重要です。
さらに、YouTube Shorts、TikTok、Instagramでは、個人投稿、企業アカウント、広告、ブランドコンテンツ、アプリ内音源、外部編集した音源について異なる条件が設けられており、同じ動画を複数のSNSへ転載すると、一方では公開できても別のサービスでは消音やブロックの対象になることがあります。
ここでは、2026年6月時点で確認できる文化庁、JASRAC、NexTone、各SNSの公式情報を基礎に、SNS動画で音楽を使用するときの基本原則、プラットフォーム別の違い、安全な確認手順、申し立てを受けた場合の対応までを整理しているため、投稿者だけでなく企業のSNS担当者や動画制作者も実務の判断材料として活用できます。
SNS動画で音楽を使うときの著作権ルール

SNSへの投稿は、自分の端末や家庭内だけで楽しむ私的使用とは異なり、不特定または多数の人が閲覧できる状態にする行為であるため、他人の音楽を動画に入れる場合は、権利者の許諾、SNS側が取得したライセンス、法律上の例外のいずれかが必要になるのが原則です。
ただし、許諾契約のあるSNSで自分が演奏したカバー曲を投稿する場合と、市販のCDや配信サービスの音源を動画編集ソフトで貼り付ける場合では、確認する権利が異なるため、音楽を使っているという一点だけで一律に判断することはできません。
安全性を高めるには、曲名だけで考えるのではなく、誰が作った曲か、誰が録音した音源か、どのSNSのどの機能で使うか、宣伝や収益が関係するかという順番で利用条件を分解することが大切です。
投稿前に押さえる結論
SNS動画で音楽を使うときの基本的な結論は、投稿画面に用意された音源を、そのSNSが認める用途と範囲で使う方法が比較的安全であり、外部から取り込んだ市販音源やサブスクリプション音源を自己判断で重ねる方法は、著作権と著作隣接権の両面で許諾不足になりやすいということです。
主要なSNSがJASRACやNexToneと利用許諾契約を結んでいる場合、管理対象となる歌詞やメロディーについて投稿者の個別手続きが不要になることはありますが、その契約が市販音源の原盤利用、替え歌、編曲、広告利用、すべての海外楽曲まで包括しているわけではありません。
アプリ内で選択できる音源も、個人の通常投稿には利用できる一方で、企業の商品紹介、タイアップ、広告配信、別媒体への転載には使えないことがあるため、音源が表示されることと、予定している用途に必要な権利が処理されていることは分けて考える必要があります。
迷った場合は、オリジナル音楽、自分で制作した効果音、商用利用条件が明示されたライブラリ、権利者から書面で許諾を得た音源の順に候補を絞ると、公開後の消音、収益移転、地域制限、削除といったトラブルを抑えやすくなります。
音楽に含まれる権利
一つの楽曲をSNS動画で使う場合でも、歌詞を書いた人や曲を作った人が持つ著作権と、歌手や演奏者の実演、レコード会社などが制作した録音物に関する著作隣接権が別々に存在することがあります。
自分で歌って自分で伴奏を演奏したカバー動画では、市販音源の原盤を使っていないため主に歌詞とメロディーの権利を確認しますが、原曲のCD、ダウンロード音源、音楽配信サービスから再生した音、第三者制作のカラオケ音源を入れると、音源側の許諾も必要になる可能性が高まります。
| 確認対象 | 主な権利者 | 利用例 |
|---|---|---|
| 歌詞 | 作詞家や音楽出版社 | 歌唱や歌詞表示 |
| メロディー | 作曲家や音楽出版社 | 演奏やBGM化 |
| 歌唱や演奏 | 歌手や演奏者 | 録音済み実演の使用 |
| 原盤 | レコード製作者 | CDや配信音源の使用 |
| 編曲表現 | 編曲者など | 既存アレンジの再利用 |
管理団体の作品検索で曲が見つかったとしても、それだけで特定の録音音源まで自由に使えることにはならないため、歌詞とメロディーを自分で演奏する場面なのか、完成済みの原盤を動画へ同期させる場面なのかを最初に区別することが重要です。
アプリ内音源の範囲
YouTube Shorts、TikTok、Instagramなどの投稿画面に表示される音楽は、各プラットフォームが一定の条件で権利者と契約し、ユーザーがサービス内の機能を通じて利用できるようにしている音源ですが、利用可能な地域、時間、動画形式、アカウント区分、商用性は曲ごとに異なる場合があります。
アプリ内音源を使った動画を端末へ保存し、音楽が入ったまま別のSNSへ投稿すると、最初のSNSが取得しているライセンスを別サービスへ持ち出す形になるため、転載先で同じ曲が提供されていても、自動的に適法な利用になるとは限りません。
また、契約更新や権利者の方針変更によって、公開時には再生できた動画が後から消音されたり、一部地域で視聴できなくなったりする可能性もあるため、長期間使う企業動画や広告素材では、流行曲だけに依存しない設計が求められます。
アプリ内音源を選ぶときは、音源名の表示だけで判断せず、投稿が通常の個人コンテンツか、商品やサービスを宣伝する投稿か、広告として配信する予定があるかを確認し、商用の場合は専用ライブラリや広告管理画面で使用可能と示された音源を選ぶのが基本です。
市販音源の取り込み
購入したCD、ダウンロード購入した曲、SpotifyやApple Musicなどで聴ける曲は、通常は個人が音楽を鑑賞するための契約であり、曲を動画のBGMとして複製し、不特定多数へ配信する権利まで購入者へ移転するものではありません。
JASRACとSNSの契約によって歌詞やメロディーの利用手続きが一部不要になる場合でも、市販音源にはレコード製作者や実演家の権利が関係するため、動画へ直接取り込むにはレコード会社などから原盤利用の許諾を得なければならないケースがあります。
特に、編集ソフトで人気曲を動画ファイルへ埋め込み、投稿時にはオリジナル音声としてアップロードする方法は、プラットフォームの音楽機能を利用していないため、音源検出システムによる申し立て、収益の移転、公開制限、削除通知につながりやすい使い方です。
曲を購入した、月額料金を払っている、公式音源を使用している、投稿文に歌手名を書いたという事情だけでは動画利用の許諾にはならないため、外部音源を使う場合は、動画への同期利用とSNS配信を含むライセンスが明示されているかを確認する必要があります。
自分で演奏するカバー
自分で歌唱または演奏し、自分で録音したカバー動画は、市販音源をそのまま使う場合より確認対象が少なく、JASRACやNexToneと利用契約のある動画投稿サービスで管理楽曲を利用する範囲では、歌詞やメロディーについて投稿者が個別に手続きしなくてよい場合があります。
ただし、使用する曲が管理団体の管理対象外である場合、契約のないSNSへ投稿する場合、権利者が独自の利用条件を示している場合には、作詞家、作曲家、音楽出版社などへの確認が必要になるため、投稿前に作品データベースとSNSの契約状況を調べることが大切です。
自分の歌に市販のカラオケ音源を重ねる場合は、そのカラオケ音源を制作した事業者の権利が関係し、店舗で歌っている様子を撮影する場合も、店内設備の音源を録音してネット配信することまで利用規約が認めているとは限りません。
カバー動画を広告や商品紹介に使う場合には、通常のUGC投稿とは異なる広告目的の複製や商用利用の確認が必要になることがあるため、個人の趣味として投稿できた実績を、そのまま企業案件の安全性を示す根拠にしないよう注意が必要です。
歌詞や替え歌の扱い
歌詞を画面に全文表示する行為や歌詞を歌唱する行為は、利用契約のあるSNSで管理楽曲を使う範囲に含まれることがありますが、サービスの契約範囲、作品の管理状況、投稿者の属性、広告性によって手続きが変わる可能性があります。
一方で、歌詞の内容を変えた替え歌、外国語への翻訳、原曲の印象を大きく変える編曲は、単なる複製や配信とは異なり、著作者の意向や著作者人格権にも関係するため、管理団体との包括契約だけでは処理されないことがあります。
批評や紹介を目的に歌詞の一部を引用する場合も、引用部分が明確に区別され、本文が主で引用が従となり、必要性があり、出所が示されているなどの要件を満たす必要があるため、雰囲気作りのために歌詞を表示する使い方は引用として認められにくいと考えられます。
替え歌を商品広告に使う、原曲の歌詞を企業名へ置き換える、原曲の一部をループさせて独自BGMにするなどの企画では、投稿直前ではなく制作開始前に音楽出版社や権利者へ相談し、許諾範囲を文書で残すことが重要です。
偶然に入った店内BGM
街頭インタビューや店舗撮影の際に、周囲で流れていた音楽が小さく録音されるケースでは、撮影対象と分離することが困難で、音楽が動画の軽微な構成部分にとどまるなどの条件を満たせば、付随対象著作物として扱われる余地があります。
しかし、店内BGMが聞こえる位置へ撮影場所を意図的に移す、音楽が明瞭に聞こえるよう録音レベルを調整する、曲に合わせて映像を編集する、サビの間だけ撮影を続けるといった行為は、偶然の写り込みや録り込みとは評価されにくくなります。
撮影時には偶然入った音でも、編集段階でその部分を長く残したり、音量を上げたり、動画の見どころとして利用したりすれば、最終的な投稿では音楽を積極的に利用したと判断される可能性があるため、制作工程全体で確認する必要があります。
店舗紹介やイベントレポートなど企業が関係する動画では、撮影許可と音楽利用許諾を混同せず、必要に応じて店内音を消す、ナレーションへ差し替える、利用条件が明確なBGMを重ねるなどの編集を行うと安全性を高められます。
数秒なら使えるという誤解
著作権のある音楽は何秒までなら自由に使えるという一律のルールはなく、三秒、五秒、十秒以内なら問題ないという情報は、法律上の包括的な許可基準として利用できません。
短い使用でも、曲の特徴的な部分を動画の演出に使い、視聴者が曲を認識できる状態で配信すれば権利処理が必要になる可能性があり、自動検出システムも使用時間だけではなく音の波形などを基に判定することがあります。
- 短時間なら必ず自由という基準はない
- 音量を下げても権利は消えない
- 速度変更だけでは許諾不要にならない
- 歌手名の記載だけでは許諾にならない
- 収益化しなくても公開には権利が関係する
- 購入済み音源でも動画利用は別問題になる
投稿者が見るべきなのは秒数ではなく、音源の入手元、利用規約、SNSとの契約対象、商用性、原盤利用の有無であり、短く加工して検出を回避しようとする方法は、権利侵害の問題に加えてプラットフォーム規約上のリスクも生じさせます。
主要SNSの音楽ルールは同じではない

主要なSNSは音楽権利者や管理団体とそれぞれ異なる契約を結び、投稿機能、広告商品、収益分配、対象地域に合わせて独自の音楽ライブラリと検出制度を運用しているため、一つのサービスで公開できた動画が他のサービスでも使えるとは限りません。
JASRACが2026年4月8日に更新した利用許諾契約締結済みUGCサービスの公表一覧には、YouTube、TikTok、Instagram、Threads、Facebookなどが含まれていますが、一覧への掲載はあらゆる音源や用途の包括的な許可を意味するものではありません。
実際の投稿では、日本の管理団体との契約だけでなく、各SNSが表示する音源の使用時間、ビジネスアカウントの制限、広告への転用条件、権利者による地域別設定も確認する必要があります。
YouTube Shorts
YouTubeでは、Shortsの作成画面に表示される音楽ライブラリから曲を選択でき、曲ごとに使用可能時間が設定されているため、表示された範囲をYouTubeの機能内で利用する方法が基本となります。
2024年10月15日以降、一般チャンネルが投稿する縦長または正方形の一分から三分までの動画はShortsとして分類され、公式アーティストチャンネルなどについても2025年12月8日以降は同様の分類が適用されるようになっています。
| 投稿内容 | 主な扱い |
|---|---|
| Shorts内の音源 | 表示時間内で使用 |
| YouTube Audio Library | 条件を確認して使用 |
| 外部から入れた人気曲 | 申し立て対象になり得る |
| 一分超で有効な申し立て | 全世界でブロックされ得る |
| 自作曲や許諾済み音源 | 権利証明を保管 |
YouTubeの公式案内では、一分を超えるShortsに有効なContent IDの申し立てがある場合、ポリシーの種類にかかわらず動画が全世界でブロックされるとされているため、長めのShortsへ外部音源を同期させる場合は特に慎重な確認が必要です。
最新条件は変更されることがあるため、投稿時には三分間のYouTube Shortsに関する公式案内と、実際の作成画面に表示される曲ごとの使用可能時間を確認することが大切です。
TikTok
TikTokでは、個人が楽しむ通常投稿と、ブランド、商品、サービスを宣伝する商業的な投稿で推奨される音楽が異なり、宣伝を含むコンテンツには商用利用が事前に処理された商用音楽ライブラリを使用することが基本です。
TikTokの公式情報では、商用音楽ライブラリ以外の一般的な音楽について同社が持つライセンスは、ブランドや商品などを宣伝するコンテンツでの商用利用をカバーしないと説明されています。
- 商品やサービスの紹介
- 企業の通常投稿
- ブランドコンテンツ
- 動画広告
- 商業目的のデュエット
- 商業目的のリミックス
商用音楽ライブラリ以外の音楽やオリジナルサウンドを宣伝投稿に使う場合は、著作権で保護された音楽を含まないこと、または必要なライセンスを取得していることを投稿者が確認する必要があるため、個人アカウントへ変更すれば企業利用の問題を回避できるわけではありません。
2025年7月更新のTikTok商用音楽ライブラリの公式案内では、商用利用が認められた約百五十万曲規模ではなく百万人ではなく、公式記載上は百万もの楽曲が用意されているとされているため、実際の検索画面で対象地域と用途を確認して選ぶことが重要です。
InstagramとThreads
Instagramのライセンス音源は、リールやストーリーズなどで利用できる著作権保護音源ですが、アカウントの種類、投稿地域、音楽権利者との契約、コンテンツの商用性によって利用できる曲や機能が変わることがあります。
一部のビジネスアカウントでは一般のライセンス音楽ライブラリへアクセスできない場合があり、企業が広告や宣伝に使う動画では、MetaのSound Collection、自作音源、必要な許諾を取得した音源などを選ぶ方が用途を管理しやすくなります。
Metaの公式案内では、Sound Collectionの音源はリールやストーリーズで使用でき、商用目的や広告にも利用できるものとして案内される一方、Instagramリール広告では一般のライセンス音楽を使用できず、オリジナル音声またはロイヤリティーフリー音源の利用が求められます。
Instagramで作った音楽付きリールをThreadsや別SNSへ共有する際は、共有機能が用意されているか、音声が維持されるか、転載先で権利処理されるかを確認し、端末へ保存した動画を無条件で使い回さないことが重要です。
安全な音楽を選ぶ実務手順

SNS動画の著作権リスクは、公開直前に曲を差し替えるだけでは十分に管理できないため、企画、撮影、編集、投稿、広告転用、アーカイブという制作工程の最初から利用方法を決めておく必要があります。
特に企業案件では、動画制作者、出演者、広告代理店、投稿アカウントの運営者が別々になることが多く、誰か一人が音源を購入していても、発注企業が広告や複数媒体で利用できる権利まで確保できているとは限りません。
安全な運用を続けるには、楽曲の知名度よりも、利用可能なSNS、商用利用、広告利用、編集、利用期間、対象地域、クレジット条件を確認し、後から説明できる記録を残すことが重要です。
用途を先に決める
音楽を探す前に、個人の趣味投稿、収益化チャンネル、企業公式アカウント、商品紹介、インフルエンサー案件、広告配信のどれに該当するかを決めると、利用できるライブラリを絞りやすくなります。
現在は通常投稿だけに使う予定でも、反応が良ければ広告へ転用する、ウェブサイトへ埋め込む、店頭モニターで流す、他のSNSへ転載するといった可能性があるなら、最初から複数用途を含む許諾を選ぶ方が再編集の負担を減らせます。
| 確認項目 | 決める内容 |
|---|---|
| 投稿主体 | 個人か企業か |
| 目的 | 趣味か宣伝か |
| 配信先 | 単一か複数SNSか |
| 収益 | 収益化や案件の有無 |
| 広告 | 広告転用の予定 |
| 期間 | 短期か常設か |
| 地域 | 国内か海外配信か |
投稿後に用途を拡大する場合は、元の許諾が新しい利用を含むかを再確認し、通常投稿で使えた音源をそのまま広告管理画面へ送信するのではなく、広告用音源へ差し替える判断も必要です。
音源の入手先を選ぶ
権利確認の負担を下げるには、SNSの用途別ライブラリ、自作音源、依頼して制作した音源、商用動画向けライセンスが明示された音楽素材サービスなど、利用条件を追跡できる入手先を優先します。
フリーBGMや著作権フリーという表示だけでは、無料利用、権利放棄、一定条件での利用許可、著作権保護期間終了など複数の意味が混在するため、名称ではなく利用規約の具体的な内容を確認する必要があります。
- 利用できるSNS
- 商用利用の可否
- 広告利用の可否
- 動画編集の可否
- クレジット表記
- 利用期間と対象地域
- 再配布の禁止範囲
- ライセンス終了後の扱い
生成AIで作った音楽を使う場合も、サービスが出力物の商用利用を認めているか、第三者の権利を侵害しない保証があるか、学習済みモデルの利用条件や補償条項がどうなっているかを確認し、AI生成という理由だけで著作権問題がなくなるとは考えないことが大切です。
許諾の証拠を残す
音源を適法に利用していても、自動検出や第三者の誤った申し立てが発生する可能性があるため、ライセンス証明書、購入明細、利用規約、権利者とのメール、契約書、音源のダウンロード日時を保存しておくと対応しやすくなります。
オンラインの利用規約は更新されることがあるため、音源を取得した時点の規約ページをPDFや画面画像で保存し、対象ファイル名、曲名、制作者名、ライセンス番号、利用プロジェクトを社内台帳へ記録すると確認漏れを減らせます。
外部の動画制作者へ発注するときは、納品物を利用できるという一般的な文言だけでなく、動画内の音楽について必要な権利処理が完了していること、広告や複数SNSへの転載が可能であること、申し立て発生時に協力することを契約へ盛り込みます。
出演者や担当者が個人アカウントで見つけた流行曲を仮編集へ入れ、そのまま納品されるケースもあるため、最終書き出し前に音源一覧と利用根拠を照合する承認工程を設けることが有効です。
著作権の申し立てを受けたときの対応

SNSから著作権に関する通知が届いても、すべてが直ちに違法行為やアカウント停止を意味するわけではなく、収益の帰属を設定する自動申し立て、音声の消去、地域制限、動画ブロック、権利者による削除申請など、通知の種類によって影響が異なります。
一方で、許諾を確認せずに異議申し立てを繰り返すと、権利者による正式な削除手続きへ進む可能性があるため、通知文、検出された曲、対象時間、申立人、適用措置を確認してから対応を選ぶ必要があります。
企業アカウントでは、動画の停止だけでなくキャンペーン日程、広告費、取引先との契約、ブランド信用にも影響するため、担当者が個人判断で通知を無視せず、証拠と対応履歴を共有できる体制を整えることが重要です。
通知の種類を見分ける
YouTubeのContent IDによる申し立ては、登録音源と投稿動画の一致をシステムが検出し、権利者が収益化、追跡、ブロックなどのポリシーを適用する仕組みであり、常に著作権侵害の警告やストライクと同じ扱いになるわけではありません。
JASRACも、YouTubeでJASRAC管理楽曲が検出された際に表示される申し立てについて、直ちに侵害を主張する通知ではなく、動画を削除する必要がない場合があると案内しています。
| 通知例 | 主な影響 |
|---|---|
| 収益化の申し立て | 収益が権利者へ配分 |
| 音声ミュート | 対象音声が消える |
| 地域制限 | 一部地域で非公開 |
| 動画ブロック | 視聴できなくなる |
| 削除申請 | 動画削除や警告 |
| 規約上の制限 | 広告や機能が停止 |
同じ曲でも、権利者、国、動画の長さ、収益化状況によって措置が異なるため、過去に別の投稿者が使用できたことや、自分の以前の動画が残っていることを、今回の利用が認められる証拠にはできません。
最初に確認する項目
通知を受けたら、慌てて異議申し立てを送る前に、動画を限定公開または広告停止にできるかを検討し、使用した音源の入手元とライセンスを確認します。
自分で演奏した曲でも、使用した伴奏音源が第三者制作であったり、音楽素材サイトから取得した曲がContent IDへ登録されていたりすることがあるため、検出区間と手元の編集データを照合する必要があります。
- 通知を送った権利者
- 検出された曲名
- 問題とされた時間
- 適用された措置
- 使用した音源ファイル
- ライセンスの対象用途
- 購入者名と投稿者名
- 異議申立期限
有効なライセンスを持っている場合は、プラットフォームの案内に沿って証明書や契約内容を示しますが、ライセンスが見つからない場合や用途外だった場合は、音楽の削除、差し替え、再編集を優先し、根拠のない異議申し立てを避けます。
再投稿でも確認する
音楽を差し替えて動画を再投稿するときは、元動画の音声トラックに小さく原曲が残っていないか、出演者のイヤホンから音が漏れていないか、編集ソフトのキャッシュに旧音源が含まれていないかを確認します。
音量を極端に下げる、速度や音程を変える、環境音を重ねるといった加工は、利用許諾の代わりにはならず、検出を逃れて一時的に公開できても権利上の問題が解決するわけではありません。
複数SNSへ投稿している場合は、通知が届いたサービスだけを修正するのではなく、同じ音源を含むTikTok、Instagram、YouTube、広告素材、ウェブサイトの埋め込み動画を洗い出し、それぞれの利用条件を再確認します。
再発防止には、完成動画だけでなく音楽素材を管理するフォルダへ利用可能媒体や広告利用の可否を記載し、編集担当者が用途外のファイルを書き出せない運用にすることが効果的です。
企業や収益化投稿で注意したいポイント

著作権法では営利目的でなければ他人の音楽を自由に投稿できるという一般的なルールはなく、非営利の個人投稿でも公衆への配信には権利が関係しますが、企業や広告の利用では通常投稿とは別の許諾やプラットフォーム制限が加わることがあります。
企業公式アカウントだけでなく、個人クリエイターが報酬を受け取るPR投稿、アフィリエイトリンクを含む投稿、商品の提供を受けたレビュー、自社サービスへ誘導する動画も、商業的なコンテンツとして扱われる可能性があります。
音楽の利用条件を確認するときは、アカウント種別だけでなく、投稿内容、報酬、広告への転用、企業による二次利用、投稿後の配信地域まで含めて判断することが必要です。
2026年時点の更新点
2026年時点では、YouTubeの三分間Shortsに関する分類と一分超の申し立て動画へのブロック条件、TikTokの商用音楽ライブラリ、Metaの広告用音楽に関する区分など、動画形式と商用性を細かく分ける運用が定着しています。
日本では2026年4月から未管理著作物裁定制度の運用が始まり、権利者の利用意思を確認できない未管理公表著作物などについて、文化庁長官の裁定と補償金の支払いにより利用できる仕組みが整備されました。
| 更新事項 | 実務への影響 |
|---|---|
| 三分間Shorts | 一分超の申し立てに注意 |
| TikTok商用音楽 | 宣伝用途はCMLを優先 |
| Meta広告音楽 | 一般ライセンス曲を避ける |
| UGC契約一覧 | 最新掲載状況を確認 |
| 未管理著作物裁定 | 正式な申請と補償が必要 |
ただし、未管理著作物裁定制度は、権利者へ連絡しにくい曲やネットで見つけた音源を投稿者が自由に使える制度ではなく、要件確認、申請、裁定、補償金の支払いを伴う正式な仕組みです。
商用投稿の確認事項
企業や収益化クリエイターが音楽を選ぶ際は、投稿画面で曲を選べるかという確認だけで終わらず、投稿そのものが宣伝に当たるか、広告へ転用するか、企業が動画を再利用するかまで確認します。
インフルエンサーが個人向けライブラリから曲を選び、企業が完成動画を広告として配信する場合、クリエイターの通常投稿で認められた利用範囲を超える可能性があるため、発注時に広告利用可能な音源を指定することが大切です。
- 報酬や商品提供の有無
- ブランド表示の必要性
- 企業による二次利用
- 広告配信への転用
- 複数SNSへの掲載
- 海外アカウントでの利用
- 利用期間の延長
- 契約終了後の公開
広告で長期間使う動画は、楽曲の契約変更によって突然配信できなくなると損失が大きいため、広告利用まで明示的に許諾された音楽、専用ライブラリ、自社で権利を管理できるオリジナル音楽を選ぶ方法が適しています。
専門家へ相談する目安
有名楽曲を企業広告へ使う、替え歌を制作する、既存曲を大きく編曲する、市販音源を複数地域へ配信する、テレビや店頭でも同じ動画を使うといった案件では、SNSのヘルプページだけで必要な権利を判断するのが難しくなります。
権利者から高額な請求や正式な削除通知を受けた場合、アカウント停止のおそれがある場合、異議申し立ての内容に迷う場合も、自己判断で相手方へ断定的な回答を送らず、知的財産に詳しい弁護士や権利処理の専門事業者へ相談することが望まれます。
楽曲の管理状況については、JASRACのJ-WIDやNexTone作品検索データベースで調べられますが、検索結果だけでは原盤、編曲、広告、海外利用などの許諾が完了したとは判断できません。
相談時には、動画データ、台本、使用音源、投稿先、広告の有無、配信地域、利用期間、契約書、権利者から届いた通知をまとめて提示すると、必要な権利と対応方法を整理しやすくなります。
よくある疑問を投稿前に解消する

SNS動画の音楽著作権では、他の投稿者も使っている、公式曲が検索結果に出る、音源を購入した、数秒しか使わないといった事情が、安全性の根拠として扱われやすい一方で、実際の許諾範囲とは結び付かないことが多くあります。
権利者が投稿を把握していない状態と、利用を正式に認めている状態は異なり、現在動画が削除されていないことも、将来にわたり公開や収益化を続けられる保証にはなりません。
最後に、投稿者が迷いやすい判断を整理し、制作現場で誤解が生じやすいポイントを確認します。
クレジットを書けば使えるか
動画の説明欄へ曲名、歌手名、作詞家名、作曲家名を記載することは、利用規約やライセンスで求められる場合には必要ですが、名前を記載しただけで権利者の許諾を得たことにはなりません。
クレジット表記を条件に無料利用できる音楽素材では、指定された形式で表記することでライセンス条件を満たせる場合がありますが、市販曲や流行曲に自主的な表記を追加しても動画利用の権利は発生しません。
| 状況 | クレジットの効果 |
|---|---|
| 表記必須の素材 | 条件を満たすため必要 |
| 表記任意の素材 | 利用条件に従う |
| 許諾のない市販曲 | 表記だけでは不足 |
| 法律上の引用 | 出所明示などが必要 |
| アプリ内音源 | SNSの表示に従う |
権利者への敬意を示したつもりでも、許諾の代わりにはならないため、クレジットを書くかどうかと、その音楽を利用できる法的または契約上の根拠があるかどうかを別々に確認する必要があります。
他の投稿者が使っている曲
同じSNSで多数の投稿者が使っている曲でも、アプリ内音源として追加した動画、権利者から許諾を得た動画、収益を権利者へ配分している動画、公開地域が制限された動画、無許諾のまま残っている動画が混在しています。
見た目が同じ投稿でも、個人の通常投稿と企業案件では利用条件が異なり、投稿者が持つ個別契約や音楽会社との関係を外部から確認することもできないため、他人の投稿を自分の利用根拠にはできません。
- アプリ内で曲を追加している
- 個別に許諾を取得している
- 収益が権利者へ移転している
- 一部地域で制限されている
- 後から消音される可能性がある
- 権利者が未対応の可能性がある
流行へ参加したい場合は、他の動画から音を抽出するのではなく、自分の投稿画面に同じ公式音源が表示されるかを確認し、商用投稿では専用ライブラリに収録されているかを改めて調べることが大切です。
自作曲なら自由に使えるか
自分が作詞、作曲、演奏、録音のすべてを行い、第三者へ権利を譲渡していない音楽であれば、原則として自分で利用範囲を決められますが、共同制作者、所属事務所、レーベル、音楽出版社、配信代行会社との契約がある場合は確認が必要です。
自作曲を音楽配信サービスへ登録し、Content IDなどの権利管理にも登録していると、自分のSNS動画に自分の曲を使った場合でも、自動的に申し立てが付くことがあります。
制作にサンプル音源、ループ素材、既存曲の一部、AI音楽サービスを利用している場合は、それぞれの利用規約がSNS配信、収益化、広告、Content ID登録を認めているかを確認しなければなりません。
自作曲を企業へ提供する際は、作曲者本人の許可だけでなく、原盤の所有者、共同著作者、実演家の同意を整理し、利用媒体、期間、地域、改変、広告利用を契約書へ明記すると後のトラブルを防ぎやすくなります。
音源の出所と投稿目的を分けて判断しよう
SNS動画で音楽を安全に使うために最も重要なのは、人気曲かどうかや使用時間の短さではなく、歌詞とメロディーの著作権、実演と原盤の著作隣接権、SNSが取得している利用許諾、投稿者自身が取得したライセンスを分けて確認することです。
アプリ内音源は比較的使いやすい選択肢ですが、個人投稿、企業投稿、ブランドコンテンツ、広告では条件が異なり、一つのSNSで付けた音楽を別のSNSへ持ち出せるとは限らないため、投稿先ごとに公式機能と最新規約を確認する必要があります。
市販音源や音楽配信サービスの曲を外部編集で取り込む方法、数秒だけ使う方法、音量や速度を変える方法、クレジットだけを書く方法は、必要な許諾の代わりにはならないため、用途が不明確な場合は自作音源、商用ライブラリ、広告利用が明示された素材へ切り替える判断が有効です。
企業案件や収益化投稿では、通常投稿から広告や複数媒体へ用途が広がることを前提に、音源の利用条件、証明書、購入記録、契約書を保存し、権利関係が複雑な人気曲、替え歌、編曲、市販原盤を使用するときは制作前に権利者や専門家へ確認することが、公開停止や信用低下を防ぐ確実な運用につながります。


