SNSで商品やサービスを紹介する施策が一般化する一方、企業から報酬や商品の提供を受けている事実を隠した投稿、広告主が作成した体験談を第三者の口コミに見せる表示、好意的な評価を条件に特典を与えるレビュー施策などが、ステルスマーケティングとして問題になるケースが増えています。
日本では2023年10月1日から、広告であるにもかかわらず一般消費者が広告だと判別しにくい表示が景品表示法上の不当表示に指定されており、Instagram、X、TikTok、YouTubeなどのSNS投稿だけでなく、口コミサイト、ECモール、動画、アフィリエイトサイト、自社サイト内の体験談も規制対象になり得ます。
ただし、SNSでステマを行った瞬間に広告主やインフルエンサーへ一律の罰金が科されるわけではなく、誰が景品表示法の対象になるのか、措置命令と課徴金がどのように異なるのか、2024年に導入された100万円以下の罰金がステマにも直接適用されるのかを分けて理解する必要があります。
2026年6月時点の制度と公表事例を踏まえ、SNSのステマに関する罰則、広告主と発信者の責任、PR表示の方法、過去投稿への対応、口コミキャンペーンの注意点、違反の疑いが生じた場合の実務まで整理するため、自社の運用に当てはめながら確認してください。
SNSステマの罰則は広告主への措置命令が中心

SNSのステマが景品表示法に違反すると、主な対象となる広告主には、違反表示による誤認の排除、再発防止策の実施、同様の表示を繰り返さないことなどを求める措置命令が行われる可能性があります。
ステマ告示だけに違反した場合は原則として課徴金納付命令の対象ではなく、故意の優良誤認表示や有利誤認表示に設けられた100万円以下の罰金も、広告であることを隠したという事実だけで直ちに適用されるものではありません。
一方で、ステマ投稿の内容自体が商品の性能を実際より著しく良く見せたり、通常より有利な価格であると誤認させたりしている場合は、ステマ告示以外の違反が重なり、課徴金や直罰まで問題になる可能性があります。
ステマ単独では措置命令が基本
広告主が投稿内容の決定に関与しているにもかかわらず、その投稿が広告であることを一般消費者が判別しにくい場合、景品表示法第5条第3号に基づくステルスマーケティング告示への違反が問題になります。
違反が認められたときは、消費者庁や権限を有する都道府県知事から、表示をやめるだけでなく、一般消費者に生じた誤認を取り除くこと、原因を調査すること、再発防止策を役員や従業員へ周知することなどを内容とする措置命令が行われる可能性があります。
措置命令は行政処分であり、その事業者名、対象商品やサービス、問題となった表示、命令内容が公表されるため、金銭的な支払いが直ちに発生しない場合でも、ブランドの信用低下、取引先への説明、広告素材の差し替え、社内調査などの大きな負担につながります。
消費者庁のステルスマーケティングに関するQ&Aでも、ステマ告示違反に対しては誤認排除や再発防止を命じる措置命令が行われると示されており、まず行政処分を中心に理解することが重要です。
規制対象は原則として広告主
景品表示法で直接規制されるのは、自己の供給する商品やサービスに関する表示内容の決定に関与した事業者であり、一般には商品メーカー、販売会社、店舗運営者、サービス提供会社などの広告主が該当します。
広告代理店やインフルエンサーに制作と投稿を任せていても、広告主が投稿を依頼し、表現の方向性を伝え、報酬を払い、修正を求められる関係にある場合は、外部へ委託したことを理由に広告主としての責任を免れることは困難です。
投稿者へ完成原稿を渡したケースだけでなく、特定の商品を紹介することを依頼し、対価や今後の契約を通じて投稿内容に影響を与えられる関係があれば、明示的な文言指定がなくても事業者の表示と判断される可能性があります。
企業側では、誰が投稿したかだけで判断するのではなく、商品提供の目的、報酬の有無、依頼内容、修正権限、過去と将来の取引、投稿後の二次利用まで含めて、表示内容の決定にどの程度関与したかを記録する必要があります。
インフルエンサーは通常の直接対象外
広告主から依頼を受けてSNSへ投稿したインフルエンサーやアフィリエイターは、通常、ステマ告示に基づく措置命令の直接の対象ではなく、広告主側が景品表示法上の責任を負うのが基本です。
ただし、インフルエンサー自身が広告主と共同して商品やサービスを供給している場合、自ら運営するブランドの商品を第三者の感想に見せて宣伝した場合などは、その発信者も供給事業者として規制対象になる可能性があります。
景品表示法の直接対象外であっても、契約でPR表示を義務付けられていたのに削除した場合、虚偽の体験談を作成した場合、企業の確認を受けずに効能を誇張した場合には、契約違反、損害賠償、報酬返還、プラットフォーム上の制裁など別の問題が生じ得ます。
発信者は広告主だけが責任を負うと考えず、提供元、依頼の有無、報酬や無償提供の事実を明瞭に表示し、実際に使用していない商品を使用したように語らないことが、自身の信用と継続的な取引を守るうえでも重要です。
課徴金はステマ告示だけなら原則対象外
景品表示法の課徴金制度は、原則として優良誤認表示または有利誤認表示に係る商品やサービスの売上額を基礎に算定される制度であり、第5条第3号の指定告示に当たるステマ表示だけは対象から除かれています。
そのため、広告であることを明示しなかった点だけが問題で、投稿に書かれた品質、効果、価格、取引条件などに別の不当表示がないケースでは、ステマ告示違反を理由とする課徴金納付命令は原則として行われません。
| 違反類型 | 主な内容 | 課徴金 |
|---|---|---|
| ステマ告示 | 広告であることを判別しにくい | 単独では原則対象外 |
| 優良誤認 | 品質や効果を著しく良く見せる | 要件を満たせば対象 |
| 有利誤認 | 価格や条件を著しく有利に見せる | 要件を満たせば対象 |
ステマ投稿に根拠のない効果表示や架空の割引表示が含まれていれば複数の違反が同時に成立し得るため、PR表記を追加するだけで安全になるとは限らず、投稿内容そのものの正確性も別に審査する必要があります。
措置命令への違反には刑事罰がある
ステマ告示への違反そのものに一律の罰金が直ちに科されるわけではありませんが、行政から出された措置命令に従わない場合は、景品表示法上の刑事罰が問題になります。
現行法では、措置命令に違反した行為者について2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が定められており、事情によっては拘禁刑と罰金が併科される可能性があります。
法人の業務として措置命令違反が行われた場合には、実際に違反行為をした担当者等への処罰とは別に、法人へ3億円以下の罰金が科される可能性があるため、命令受領後の放置や不十分な修正は極めて重大なリスクです。
命令対象となった表示だけを削除して終えるのではなく、同じ仕組みで作られた別商品の投稿、インフルエンサーが残している過去投稿、広告代理店の管理画面、自社サイトへ転載した口コミまで確認し、命令内容に沿った是正を完了させる必要があります。
100万円以下の直罰は対象が異なる
2024年10月1日に施行された改正景品表示法では、故意に優良誤認表示または有利誤認表示を行う行為について、行政処分を経なくても100万円以下の罰金を科し得る直罰規定が導入されました。
この直罰は、商品の品質や性能を実際より著しく優良に示す表示、価格や取引条件を実際より著しく有利に示す表示を故意に行った場合を対象としており、広告であることを隠したというステマ告示違反だけを直接処罰する規定ではありません。
例えば、企業から依頼された投稿である事実を隠しただけでなく、実際には得られない効果を得たとする架空の体験談を広告主が故意に作成した場合は、ステマ告示と優良誤認表示の双方が問題になり、直罰の検討対象となる余地があります。
PR表記の有無、表示内容の真実性、広告主の認識はそれぞれ異なる論点であるため、社内審査では一つの確認項目へまとめず、広告性の開示、根拠資料、価格条件、体験者の実在性を分けて審査することが適切です。
2026年公表の運用状況
消費者庁が2026年5月28日に公表した令和7年度の運用状況では、国による措置命令と確約計画の認定に含まれるステルスマーケティング告示の違反被疑行為が4件、指導が7件と整理されています。
4件はエステティックサロンの口コミ、冷凍宅配食の体験談、冷凍宅配食のランキング表示や体験談に関する確約計画の認定に含まれており、問題が疑われた段階で事業者が是正計画を申請する確約手続の利用が進んでいる点が特徴です。
| 公表区分 | ステマ告示の件数 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 措置命令・確約計画 | 4件 | 口コミや体験談 |
| 指導 | 7件 | SNS依頼やレビュー表示 |
| 都道府県の事例 | 公表例あり | 架空のSNS体験談 |
令和7年度における景品表示法等の運用状況では、モニター募集サイトを通じて第三者へSNS投稿を依頼し、その投稿の一部を抜粋して利用した事例への指導も示されており、投稿時だけでなく転載時の管理が重視されています。
過去投稿も公開中なら対象になり得る
ステマ規制が施行された2023年10月1日より前に投稿された広告であっても、施行後もSNSやウェブサイト上で一般消費者が閲覧できる状態にあり、広告であることが明瞭でなければ行政処分の対象になる可能性があります。
投稿日が古い、現在はインフルエンサーとの契約が終了している、広告費の支払いが完了しているという事情だけでは、現在も続いている表示の問題が解消されたことにはなりません。
- 契約終了後も残るSNS投稿
- 固定表示された動画やショート投稿
- 自社サイトへ転載した体験談
- ECモールに残る依頼レビュー
- 広告代理店が保有する記事広告
広告主は現行キャンペーンだけでなく、過去の案件台帳、提供商品の発送履歴、報酬支払い記録、アフィリエイト記事、退職した従業員の業務投稿まで検索し、修正できない投稿については削除依頼や二次利用の停止を検討する必要があります。
どこからSNSステマと判断されるのか

SNS投稿がステマ告示に違反するかは、企業から金銭が支払われたかだけで決まるのではなく、投稿が広告主の表示に当たるか、広告主が内容の決定に関与したか、一般消費者が広告だと明瞭に認識できるかを総合的に見て判断されます。
無償提供だけの案件、内容を自由にしたレビュー募集、抽選型のハッシュタグキャンペーンなどは一律に違反となるわけではありませんが、好意的な評価を条件にしたり、将来の起用を期待させたりすれば事業者の関与が認められやすくなります。
形式的に契約書へ自由投稿と書いてあっても、実際のメッセージで修正を求めていたり、否定的な投稿者を次回から外していたりすれば、書面ではなく実態を基に判断される点に注意が必要です。
事業者の関与は実態で決まる
事業者の表示に当たるかを判断する中心的な基準は、投稿者が自主的な意思で表示内容を決めたといえるか、それとも広告主との関係によって内容が実質的に決められていたかという点です。
完成原稿や必須文言を渡す行為はもちろん、商品の長所だけを紹介するよう依頼すること、投稿前の確認を必須にすること、否定的な表現の削除を求めること、評価に応じて報酬を変えることも関与を認定する材料になり得ます。
| 判断材料 | 関与が強い例 | 関与が弱い例 |
|---|---|---|
| 依頼内容 | 推奨表現を指定 | 自由な感想を依頼 |
| 対価 | 投稿の見返りに報酬 | 不特定多数へ試供品配布 |
| 修正 | 否定的表現を削除 | 事実誤認だけを訂正 |
| 継続関係 | 今後の起用を示唆 | 単発で関係が終了 |
個々の要素だけで自動的に結論が出るわけではないため、企業は依頼時のメール、チャット、募集要項、選定基準、報酬条件、修正履歴を保存し、第三者が見ても投稿者の裁量範囲を説明できる状態にする必要があります。
PR表示は見つけやすさが重要
広告であることを示す方法としては、広告、宣伝、プロモーション、PRなどの表現や、企業から依頼を受けて投稿していること、商品の提供を受けていることを具体的に記載する方法が挙げられます。
重要なのは特定の単語を形式的に入れることではなく、投稿全体を見た一般消費者が、第三者の自発的な感想ではなく事業者による広告だと容易に認識できる状態にすることです。
- 投稿本文の冒頭付近に表示する
- 本文と同程度以上の読みやすさにする
- 大量のハッシュタグに埋もれさせない
- 画像内だけでなく本文にも記載する
- 動画では途中視聴者にも伝わる形にする
- 提供元となる企業名を明らかにする
本文ではなく返信欄だけに広告と書く方法、小さな文字や背景と同化する色で表示する方法、プロフィール欄へ一括して記載する方法は、対象投稿を見た人が気付かない可能性があるため、安全な運用とはいえません。
無償提供でも広告になる場合がある
報酬が金銭ではなく商品、無料施術、宿泊、招待券、ポイント、割引、将来の起用機会などで提供される場合も、対価の内容や提供目的によっては投稿が事業者の表示に当たります。
街頭で不特定多数へ試供品を配り、投稿するかどうかや内容を受取人へ委ねるケースは通常関与が弱い一方、発信力を見て選んだ特定のインフルエンサーへ商品を送り、投稿を依頼するケースでは一定の関係性が認められやすくなります。
商品を送っただけなので広告ではないと処理するのではなく、なぜその人を選んだのか、投稿を期待していたのか、投稿後に次の案件を予定していたのか、紹介内容に条件を付けたのかを確認しなければなりません。
判断に迷う案件では、提供を受けた事実や企業から依頼された事実を明瞭に示しておくほうが消費者への透明性を高められますが、PR表記を付けた後も効能や価格の表示に合理的な根拠が必要な点は変わりません。
投稿パターン別に違反リスクを見分ける

SNSステマは、著名なインフルエンサーへ報酬を支払う案件だけでなく、一般顧客へのレビュー依頼、従業員の個人アカウント、プレゼントキャンペーン、アフィリエイト記事、モニター投稿、体験談の転載など幅広い場面で発生します。
特に危険なのは、企業が好意的な評価だけを集め、第三者による自然な口コミのように見せる設計であり、星5の指定、推奨コメントの指定、否定的な意見の削除、架空アカウントの作成は避ける必要があります。
投稿者の属性ではなく、表示内容を誰が決め、どのような利益が提供され、広告であることが閲覧者へ伝わっているかを軸に、施策ごとのリスクを判断してください。
レビュー特典は条件で差が出る
商品購入者やサービス利用者へ、レビューを投稿すれば次回利用できるクーポンを渡す施策は、投稿内容を自由にしている限り、通常は直ちに事業者の表示になるとは限りません。
一方で、星5を付けること、好意的なコメントを書くこと、おすすめという文言を入れることを特典の条件にすると、事業者が評価内容を決めたと判断されやすくなります。
| 施策 | リスクの目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 内容自由のレビュー特典 | 比較的低い | 評価を指定していない |
| 星5を条件に特典付与 | 高い | 評価内容を指定している |
| 推奨コメントを必須化 | 高い | 好意的表示を求めている |
| 事実誤認だけの訂正依頼 | 比較的低い | 評価の変更が目的ではない |
| 低評価レビューを非表示 | 高い | 全体印象を恣意的に操作する |
レビュー募集では、投稿の有無だけを特典条件にし、肯定的か否定的かで特典を変えず、募集要項へ率直な感想を歓迎することを明記し、担当者が低評価を理由に修正依頼をしない運用が適切です。
インフルエンサー案件の危険例
インフルエンサー施策では、契約書にPR表示を定めていても、実際の投稿で表示が削除されていたり、続きを読む操作の後ろに隠れていたり、数十個のハッシュタグに埋もれていたりすれば十分とは限りません。
広告主が投稿前に原稿を確認する場合は、商品名やブランドイメージだけでなく、広告表示の位置、効能表現の根拠、価格条件、個人の体験と一般的効果の区別まで確認する必要があります。
- PR表示を返信欄だけに置く
- 提供元を明らかにしない
- 使用前後の画像を加工する
- 実際には使っていない感想を書く
- 効果を保証する表現を入れる
- 投稿後に広告表示だけ削除する
- 依頼投稿を自然な口コミとして転載する
投稿の公開後も一定期間はモニタリングし、編集によってPR表示が消えていないか、コメントへの返信で新たな効能を断定していないか、別媒体へ無断転載されていないかを確認することが必要です。
従業員投稿やアフィリエイトも対象
従業員が個人のSNSアカウントで自社商品を紹介した場合でも、それだけで直ちに事業者の表示になるわけではありませんが、販売促進を担当する役員や社員が業務目的で発信すれば、企業の関与が認められる可能性があります。
プロフィールに勤務先を書いているだけでは、個別の投稿が広告であることまで明瞭になるとは限らないため、業務として宣伝する投稿には広告である旨や自社の宣伝として投稿している旨を分かりやすく表示することが望まれます。
アフィリエイトサイトでは、ページ上部へ広告を利用していると一度表示するだけでなく、報酬を受けて掲載したランキング、専門家コメント、体験談などが第三者の中立的評価に見える場合は、その表示の近くでも関係性を示す必要があります。
企業は正規の広告部門だけを管理対象にせず、営業担当者、店舗スタッフ、採用担当者、販売代理店、加盟店、アフィリエイターが自主的に作成する表示も含め、投稿ルールと相談窓口を整備する必要があります。
企業と発信者が今すぐ整える実務

ステマを防止するには、投稿へPRと記載するよう一度伝えるだけでなく、企画、契約、原稿確認、公開、転載、保存、終了後の削除まで一連の管理工程を作る必要があります。
広告主、広告代理店、キャスティング会社、インフルエンサーの間で責任が分散すると、誰も最終投稿を確認しない状態になりやすいため、広告主側に承認責任者を置き、記録を集約することが重要です。
違反が疑われたときに素早く対象範囲を特定できるよう、投稿URL、公開日、契約相手、提供した利益、承認履歴、利用媒体、転載先、修正期限を案件台帳へ残してください。
契約と投稿ルールを具体化する
インフルエンサーや制作会社との契約では、法令を守るという抽象的な条項だけでなく、広告表示の方法、禁止表現、事前承認、公開後の編集、証拠保存、問題発生時の修正期限を具体的に定める必要があります。
広告主が最終責任を外部へ転嫁することはできませんが、関係者の行動基準を明確にすれば、表示漏れを減らし、違反時の連絡と修正を迅速に進められます。
- 依頼元の企業名を明示する
- PR表示を本文冒頭付近へ置く
- 投稿前に広告主の承認を受ける
- 根拠のない効果を記載しない
- 画像や体験談を捏造しない
- 公開後の無断編集を禁止する
- 修正依頼へ速やかに対応する
- 過去投稿の保存期間を定める
テンプレートを全案件へ機械的に当てはめるのではなく、短文投稿、ライブ配信、動画、ストーリーズ、アフィリエイト記事など、利用者が広告表示を認識するタイミングに合わせて媒体別のルールを用意することが大切です。
社内審査を工程化する
投稿審査では担当者の経験だけに頼らず、広告主の関与、広告表示の明瞭性、内容の根拠、価格条件、第三者素材の利用許諾という複数の観点を工程ごとに確認します。
広告性の開示が適切でも、効果やランキングが不正確なら別の不当表示となり得るため、法務担当だけでなく、商品開発、品質保証、営業、カスタマーサポートが保有する情報も審査に反映させる必要があります。
| 工程 | 確認事項 | 保存する記録 |
|---|---|---|
| 企画 | 投稿目的と対象媒体 | 企画書 |
| 依頼 | 報酬と表現条件 | 契約書や依頼文 |
| 審査 | PR表示と根拠 | 承認履歴 |
| 公開 | 最終表示の状態 | URLや画面記録 |
| 監視 | 編集や転載の有無 | 確認日と対応記録 |
| 終了 | 残存投稿の扱い | 削除や修正の証跡 |
承認した原稿だけを保存するのではなく、実際に公開された画面を日時が分かる形で記録し、投稿者による後日の編集やSNS側の表示仕様変更があった場合も追跡できるようにしてください。
疑いが判明したら範囲を広く調べる
PR表示の欠落や架空レビューが見つかった場合は、その投稿だけを非公開にして終了せず、同じ担当者、代理店、募集サイト、テンプレート、商品で作られた表示を横断的に調査する必要があります。
最初に対象投稿の画面、契約書、チャット、報酬記録、修正履歴を保全し、その後に新規配信と二次利用を停止して、影響範囲と消費者の誤認を排除する方法を検討します。
行政調査が始まってから記録を集めようとしても、担当者の退職、投稿の削除、代理店との契約終了によって事実確認が困難になるため、平時から案件ごとの資料を一元管理することが重要です。
法的評価が難しい場合や複数の表示類型が重なっている場合は、景品表示法を扱う専門家や行政の相談窓口へ早めに相談し、ステマ告示だけでなく優良誤認、有利誤認、医薬品等の広告規制など関連法令も含めて対応を決める必要があります。
広告であることを隠さない運用が最大の予防策
SNSのステマに関する罰則は、広告であることを隠した投稿へ直ちに一律の罰金を科す仕組みではなく、広告主に対する措置命令を中心とし、命令に従わない場合には行為者への拘禁刑や罰金、法人への高額な罰金が問題になる構造です。
ステマ告示だけなら課徴金は原則として対象外ですが、投稿内容に根拠のない効果、架空の体験談、不正確な価格比較などが含まれれば、優良誤認表示や有利誤認表示として課徴金や100万円以下の直罰が検討される可能性があります。
広告主は、インフルエンサーへ任せたから責任がないと考えず、依頼内容、対価、修正権限、PR表示、投稿内容の根拠、公開後の編集、過去投稿の残存状況まで一貫して管理しなければなりません。
発信者側も、景品表示法の直接対象外となる場合が多いことに安心せず、企業との関係を閲覧者がすぐ認識できる形で示し、実体験と広告用の表現を混同せず、率直で正確な情報を発信することが長期的な信頼につながります。
制度や行政運用は更新される可能性があるため、施策開始時だけでなく定期的に消費者庁のステルスマーケティング情報と公表事例を確認し、広告であることを隠さないという原則を社内外の全関係者で共有することが最も確実な予防策です。



